自然への介入 種の進化を追う 「サステナビリティとダーウィニズムについて考える 気候馴化と動物資源管理の歴史 ̶19世紀イギリスを中心に」レポート

 オンライン講演会「サステナビリティとダーウィニズムについて考える 気候馴化と動物資源管理の歴史 ̶19世紀イギリスを中心に」が9月6日に行われた。動物園の歴史を専門に研究している東京外国語大学大学院総合国際学研究院の伊東剛史准教授が講演を行い、コメンテーターとして本学国際教養学部国際教養学科の伊藤毅准教授、渡邉剛弘准教授、本学地球環境学研究科地球環境学専攻の黄光偉教授、本学外国語学部英語学科の小川公代教授が登壇した。

 伊東准教授によれば19世紀イギリスで家畜化・品種改良・繁殖などが進歩主義と結びついた。非体系的に行われていたこれらの営みが組織立てて体系的に行われるようになり、現在の人と自然との関係に大きな影響を与えているという。

 当時は自然への介入と操作が可能だと楽観的に考えられていた。そのような科学観・自然観を体現するのが「気候順化」という言葉だ。伊東准教授は気候順化が当時どう考えられていたか、実際にどのような人々がどこからどんな動物を集めてきて繁殖させようとしたか、それらの実践が現代にどう影響したのかの三つの視点から気候順化を論じた。

 19世紀フランスでは種は変化するかという問いが熱心に研究されていた。回答は、変わらないとする「同一不変論」、気候などの環境によって変わるという「環境決定論」があった。一方イギリスではフランスとは異なり、創造説の否定やキリスト教に支えられた伝統的身分制社会の相対化につながるとして、種の変化という考えは危険視されていた。そのためイギリスでは理論を突き詰めることはなされず、広大な土地を持つジェントルマン科学者による動物コレクションが研究の基礎となった。

 講演では気候順化の実践が紹介された。第13代ダービ伯は動物コレクションに傾倒し、その死後に動物はオークションにかけられた。哺乳類だけで1000種類以上の動物が記されており、大規模な「気候順化」を行っていたとわかる。また1856年からイギリス動物学会により、ヒマラヤに生息する全種類の猟鳥を集め、気候の似たスコットランドの高地に新たなハンティング場を作るという計画が推し進められた。しかし捕獲した鳥を運輸する過程で大部分が死亡し、計画は失敗した。また、気候順化が様々な意図をもって利用された例も紹介され、羊毛産業の成長や水産資源の管理、生態系の再構築やプロパガンダなど多岐にわたった。 

 気候順化というキーワードで括られる当時の研究は現代の人と動物の関わりにも大きな影響を与えている。ウォレスライン等の業績は動物地理学、生物地理学に活かされ、現在の自然保護に繋がった。また新種が多く見つかったことで新しい分類命名法が国際標準化され、異なる言語間でも動物の了解がとれるようになった。

 講演後のディスカッションでは人間の自然への向き合い方の歴史や新型コロナウイルスと動物倫理の関係などが議論された。

(榎奈緒)