学生時代に世界一周! 上智卒風景写真家・GOTO AKIさんの「好きな仕事をして生きる」

 

本学経済学部経営学科1995年卒業の風景写真家・GOTO AKIさんによる個展「terra」が品川キヤノンギャラリーSにて3月4日まで開催されている。そのほとんどの作品が日本国内の誰でもいける場所で撮られたという。美麗なその作品たちは抽象画のようなアート作品の要素を持つが、写されているのは紛れもなく現実の風景だ。写された風景たちはその裏に潜む「地球の鼓動」というストーリーで紡がれている。GOTOさんは従来の風景写真の価値観を崩し、新たな手法で風景を再構築して表現し、風景写真に新しい風をもたらした。その原点はなんなのか。学生時代から今の撮影スタイルまでを聞いた。(星野雄飛)

 

「世界一周の旅から写真の道へ」

小学生の頃、ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』を読み「世界一周」に関心を持ったGOTOさん。本学在学中に沢木耕太郎のエッセイ『深夜特急』を読んで、子供の頃からの夢であった世界への旅を具体的なものとしてイメージできるようになったという。入学時は留学への憧れを抱いていたが次第に薄れ、世界一周へ旅立つことを決意。大学4年生の夏、世界一周へ出発した。

旅中、GOTOさんはサハラ砂漠で7歳年上の日本人カメラマンと出会った。「ボロい服装にボサボサの髪ながらキラキラとしていた目が印象的だった」とGOTOさん。就職して大企業の会社員となった大学の先輩達とは何かが違う。この出会いはGOTOさんにとって衝撃だった。大学では出会えなかった「好きな仕事をして生きる人」に感銘を受けた瞬間だ。

帰国後、総合商社の丸紅株式会社に入社。東南アジアなどで天然ガスパイプの輸送ルートの調査など、現場で活躍した。空き時間にはカメラ片手に街を歩き現地の様子を写真に記録した。まだネットの通信速度が遅い時代で、実際の写真は現地を知る有益な方法であったため、会社、ときには国土交通省や外務省からも「写真付きレポート」を求められたという。

責任のある仕事を任されながらも、写真で生きて行きたい気持ちが消えず、わずか3年でGOTOさんは商社マンとしての人生を終えることにした。

退職後、世界一周の際に旅人との交流で知った東京綜合写真専門学校に入学した。「アート漬け、スナップ写真漬けの2年間を過ごして、一瞬、そして偶然を切り取る感覚を養った」。専門学校卒業後は、フリーランスのカメラマンとして雑誌などの仕事を行う一方、自身の「写真作家」としてのテーマが悩みだっだ。

2005年頃、これまで歩んで来た道程の総決算が「風景写真家 GOTOAKI」を自然発生させた。世界一周に始まり、商社時代に至るまでに身についた地球的身体距離と異邦人の視点から日本を見つめる視線。専門学生時代に身につけたスナップショットの感覚とアートの感覚。そして、ネガとHDDに眠る写真群を見返すことで徐々に見えて来た自分と風景とのシンパシー。この三つが結びつき、試行錯誤の上で一つの形に出来上がったものがこの個展「terra」だという。

 

「点ではなくて面で捉える」

作品制作の上で重要な写真を撮る「視点」に今も大きな影響を残すのが、本学学生時代に経験した8ヶ月間の世界一周だ。「世界をバスや鉄道で移動したので、地球の大きさや距離感が体に染み込み、場所を点ではなくより大きな面という範囲で捉えるようになった」とGOTOさんは語る。日本の風景をモチーフとした本展は、特定の点としての場所ではなく、その周囲を含めた面としての撮影地をイメージしている。では、地球の一部としての捉えた時に日本はどう映るのだろう?

「日本は世界の陸地のたった0.25%の面積しかありませんが、世界の火山のうち7%もが集まっている火山密集国です。日本は火山でできていると言っても過言ではなく、地球の表情をテーマとした時、日本中にある火山とその周辺が、自然的に主たるモチーフとして表れました」。GOTOさんは、季節や天候に左右されずに、そこにあるがままの光景を「光・時間・色・造形・音・気温・匂い・風」といった要素にまず解体する。それらを自分の視点で再構築して作品に昇華するという。本展を鑑賞すると、決めつけない写真たちが鑑賞者に様々な捉え方を許すことに気づくだろう。

写真はその人の全てを写すとよく言われるが、「terra」にはまさにGOTOさんの人生が詰まっている。世界一周、ビジネスマン時代、専門学校時代、職業カメラマン中心の時代と一見バラバラにも見える過程だが、「GOTO AKI」という写真家の中ではこれらが相互に共鳴し合い、有機的に繋がっている。これらのどれ一つを除いても現在のGOTOさんとその作品たちは生まれなかった。人とは異なった人生の歩み方が風景写真の新たな表現を開拓したのである。

GOTO AKIさんと個展の美しい作品たち

美麗な作品たちの中に佇むGOTO AKIさん

 

「在校生へ」

最後にGOTOさんから学生に向けてのメッセージ。「デジタルネイティブ世代の若者にはいかにアナログを取り入れるかを大事にしてほしい。写真展はアナログなもの。わざわざ時間とお金をかけてやることには意味がある。写真展という空間の提供は人同士の出会いを生む。出会いは人に『バイブレーション』を発生させ、自分にも相手にも『衝動』を生む。衝動は自分の世界を広げてくれる」。

在校生の中には自分の大学生活に満足できていない人もいるかもしれない。その理由はさまざまだろうが、自分がやってきたことやこれから挑戦していく経験に無駄なものはないとGOTOさんは教えてくれた。まさに、この個展は卒業生のGOTOAKIが上智生に与えてくださった「衝動」そのものであった。

2019年2月25日