英文学科・飯野教授に聞くノーベル文学賞

 2020年のノーベル文学賞にアメリカの詩人ルイーズ・グリュックが選出されたことについて、本学文学部英文学科の飯野友幸教授に話を聞いた。飯野教授によると、グリュックの文体は地味ではあるものの、内容は私生活なども交えて余計な表現の少ない「そぎ落とされた」ものであることが特徴だ。神話を取り入れることで時間、空間的に離れていても本質は変わることのない人間を描き、人間とは何かを普遍的に問うていることで、読んでいると深く考えさせられるという。

 グリュックは1943年に裕福な家庭に生まれた。拒食症を患い、大学には進学しなかったが、詩の創作講座に通う。グリュックが育った冷戦初期は、第二次世界大戦から帰還した兵士たちが政府の政策により大学に通うこともできたため、大学の大衆化が進むとともに文学が保護されるようになった。飯野教授は「20世紀のアメリカ文学の潮流だった機能的戸さえ言えるミニマルな表現方法がグリュックの詩にも見られる」と指摘する。

 「今回のグリュックの選出は意外だった。若者の文学離れが嘆かれる昨今において少しでも興味を持ってもらうために、良い意味で世間の予想を裏切りたかったのではないか。近年のノーベル文学賞では万人受けしにくい前衛的な作品も選出しつつ、文学のバラエティーに目を開かせるような選出になったように感じる」と飯野教授は語った。

 飯野教授は今回のグリュックの受賞が日本文学界に与える影響について「日本文学、特に現代詩は難解な表現で描かれることが多いため読者には敷居が高く、ほとんど売れることはない。そんな中で比較的わかりやすく、それでいて深く人間や世界を洞察する作風であるグリュックが世界的に評価されたことは、日本文学で新たな潮流を生み出す可能性を作ったと言える」と説明した。

(津田将貴)